2016年4月に発生した熊本地震から、2026年で10年を迎えました。「一度大きな地震が起きたから、しばらくは大丈夫なのでは」と考えたくなるかもしれません。しかし、熊本地震で活動したのは周辺にある活断層帯の一部であり、九州のどこに住んでいても地震への備えを終わらせることはできません。
では、これから家を建てる人は、何をどこまで備えればよいのでしょうか。耐震性能だけを高めれば十分なのか、土地や地盤、家具の配置、停電・断水への備えまで考えるべきなのか。限られた予算の中では、優先順位に迷う方も多いでしょう。
この記事では、鹿児島大学で地震・火山を研究する井村隆介先生を迎えた国分ハウジンググループの動画をもとに、熊本地震の教訓と、地震に強い家づくりで確認したいポイントを一般の方にもわかりやすく整理します。
この記事でわかること
- 「大きな地震の後はしばらく安心」とは言い切れない理由
- 熊本地震で震度7の揺れが2度発生した経緯
- 直接死だけでなく、災害関連死にも備える必要性
- 耐震・地盤・家具・ライフラインをまとめて考える方法
- 限られた家づくり予算の中での優先順位
「大きな地震の後だから安心」とは言えない
動画で最初に取り上げられるのは、「熊本地震で大きく揺れたのだから、同じ地域ではしばらく大地震は起きないのでは」という疑問です。
2016年の熊本地震では、布田川断層帯の布田川区間と、日奈久断層帯の最も北側にある高野―白旗区間が主に活動しました。一方で、布田川断層帯の宇土区間・宇土半島北岸区間、日奈久断層帯の日奈久区間・八代海区間などは活動していません。
これは「近いうちに必ず別の区間が動く」という意味ではありません。地震の発生時期を正確に予測することはできないためです。ただし、周辺に活動していない区間が残っている以上、「一度経験したから地域全体が安全になった」とも言えません。
地震から10年という年月は、安全を保証する区切りではありません。記憶が薄れ、当時を知らない子どもが増える時期だからこそ、経験と備えを次の世代へ引き継ぐ節目と考えることが大切です。
熊本地震が教えた「強い揺れは一度とは限らない」
2016年4月14日21時26分、熊本県熊本地方でマグニチュード6.5の地震が発生し、益城町で震度7を観測しました。その約28時間後、4月16日1時25分には、さらに規模の大きいマグニチュード7.3の地震が発生。益城町と西原村で再び震度7を観測しました。
最初の揺れを乗り切った後、自宅に戻ったり、気持ちを緩めたりしたくなるのは自然なことです。しかし熊本地震では、その後により大きな地震が起こりました。大きな地震の後も地震活動が続く可能性を前提に、安全な場所の確認や避難の判断を続ける必要があります。
また、熊本地震は内陸の浅い場所で発生した地震です。海溝型地震とは被害の現れ方が異なりますが、どちらか一方にだけ備えればよいわけではありません。土地選びでは活断層だけでなく、揺れやすさ、液状化、土砂災害、洪水、津波など、地域ごとの複数のリスクを確認しましょう。
地震に強い家づくりで確認したい4つの視点
1.土地周辺の災害リスクを確認する
建物の性能が高くても、敷地周辺の道路が寸断されたり、土砂災害や液状化が発生したりすれば、生活への影響は避けられません。土地を決める前に、国のハザードマップポータルサイトと自治体のハザードマップを確認し、想定される災害を重ねて見ておきましょう。
ハザードマップは「危険区域の外なら安全」という判定表ではありません。避難所までの経路、高低差、周辺道路、河川や斜面との位置関係も現地で確認すると、地図だけではわからない点に気づけます。
2.耐震性能と構造のバランスを確認する
住宅性能表示制度の耐震等級は、建物の倒壊・崩壊のしにくさを比較する目安です。耐震等級3は、耐震等級1で想定する地震力の1.5倍に対して、倒壊・崩壊しない程度とされています。
ただし、等級が高ければどのような地震でも無傷という意味ではありません。壁や柱の配置、接合部、基礎、屋根の重さなど、建物全体のバランスが重要です。耐震と、揺れによる変形を抑える制震の考え方も含め、採用する構造と計算方法を住宅会社へ確認してください。
3.地盤調査と基礎を敷地ごとに考える
周辺の地盤情報が良好でも、同じ地域の中で地盤の状態が異なることがあります。敷地が決まったら、スクリューウエイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)など、建物と地盤に合った方法で調査します。
調査結果によっては地盤改良が必要です。工事費だけを見るのではなく、どの深さにどのような地層があり、なぜその改良方法や基礎が選ばれたのかまで説明を受けましょう。
4.家具・家電とライフラインまで設計に含める
建物が無事でも、家具や家電の転倒・移動によってけがをしたり、出入口が塞がれたりすることがあります。背の高い家具を置く場所、壁への固定方法、寝室や子ども部屋の安全、食器棚の扉、冷蔵庫の転倒防止まで、間取りと一緒に考えましょう。
造り付け収納を増やせば安全性を高めやすい一方、予算や将来の使い方とのバランスも必要です。「収納量を増やす」だけでなく、「倒れにくい・物が飛び出しにくい・避難経路を塞がない」という視点で計画することが大切です。
限られた予算では何から優先する?
地震対策に大切なことをすべて追加仕様にすると、予算が膨らんでしまいます。まずは、後から変更しにくいものから優先すると整理しやすくなります。
| 優先 | 確認すること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 土地・周辺リスク | 建築後に場所は変えられないため |
| 2 | 耐震・基礎・地盤 | 完成後の大幅な変更が難しいため |
| 3 | 間取り・収納・避難経路 | 家具転倒や避難のしやすさに影響するため |
| 4 | 家具固定・備蓄・非常用品 | 入居後も段階的に改善できるため |
見た目の設備や広さをすべて諦める必要はありません。標準仕様に含まれる耐震性能、地盤調査や改良の費用、制震装置の追加費用などを早めに確認し、総予算の中で比較しましょう。価格だけでなく、「何が標準で、何が別途費用なのか」をそろえて比べることがポイントです。
打ち合わせで使える地震対策チェックリスト
- 土地周辺の揺れやすさ、液状化、土砂災害、洪水、津波を確認したか
- 避難所までの経路を昼と夜の両方で確認したか
- 耐震等級と、その根拠となる計算方法を確認したか
- 耐震と制震の役割の違いについて説明を受けたか
- 地盤調査結果と基礎・地盤改良の理由を確認したか
- 寝室や子ども部屋に倒れやすい家具を置かずに済むか
- 冷蔵庫・食器棚・テレビなどを固定できる壁や下地があるか
- 家具が倒れても玄関や廊下を塞ぎにくい配置か
- 飲料水、非常用トイレ、常用薬などを保管できるか
- 停電・断水時に家族がどこでどう過ごすか話し合ったか
地震に強い家づくりでよくある質問
Q.熊本地震で大きく揺れた地域は、当面安全ですか?
A.地域全体が安全になったとは言えません。2016年に活動したのは布田川・日奈久断層帯の一部で、活動していない区間もあります。また、離れた場所で起こる地震の揺れを受けることもあります。発生時期は予測できないため、どこに住んでいても備えを続けることが基本です。
Q.耐震等級3なら被害は出ませんか?
A.被害が一切出ないことを保証するものではありません。耐震等級は構造躯体の倒壊・崩壊などのしにくさを示す目安です。地震の性質や地盤、施工状況、繰り返しの揺れなどによって被害は変わります。等級だけでなく、構造計算、地盤、基礎、施工品質まで確認しましょう。
Q.ハザードマップで色が付いていなければ安心ですか?
A.色が付いていないことは、災害リスクがゼロという意味ではありません。想定条件や表示対象外の災害もあります。自治体の最新情報、現地の高低差や道路状況、過去の災害履歴もあわせて確認してください。
Q.家具の地震対策は入居後でもできますか?
A.入居後でも固定器具などを取り付けられます。ただし、新築時に家具の位置を決め、固定用の下地を設けておくと確実に施工しやすくなります。寝室や避難経路には背の高い家具を置かない計画も有効です。
まとめ|地震に強い家は「建物+暮らし」で考える
熊本地震から10年が経っても、地震への備えが不要になるわけではありません。大きな揺れは一度で終わるとは限らず、周辺には2016年に活動しなかった活断層の区間もあります。
家づくりでは、耐震性能だけでなく、土地周辺の災害リスク、地盤と基礎、家具・家電の配置、停電や断水後の暮らしまで一つの計画として考えることが大切です。限られた予算では、完成後に変えにくい土地・構造・地盤から優先して確認しましょう。
国分ハウジングでは、土地探しから建物の性能、資金計画までまとめてご相談いただけます。
「検討中の土地にはどのようなリスクがある?」「耐震と制震の違いがわからない」「予算内で何を優先すべき?」といった段階でも構いません。ご家族に合った備えを一緒に整理します。
国分ハウジングの地震対策については、地震に強いおうちづくりもご覧ください。
- 国分ハウジンググループチャンネル「地震に強い家づくり」専門家解説動画
- 熊本地方気象台「熊本地震から10年」
- 熊本県「熊本地震から10年~記憶と教訓を未来へ~」
- 地震調査研究推進本部「布田川断層帯・日奈久断層帯」
- 国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」
- 総務省消防庁「家具・家電製品の転倒防止」
※地震の発生時期や規模を正確に予測することはできません。ハザードマップや活断層の情報は、特定の土地の安全性を保証するものではありません。土地・建物ごとの判断については、自治体や設計者、施工会社などの専門家へご確認ください。