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資金(ローン)について
2021.10.29
夢のマイホームを手に入れる際、親から資金援助を受ける方も少なくありません。
親からの援助が不要だと思っている方であっても、いざ援助してくれるとなると甘えたいというのが正直な気持ちかもしれません。
しかし、その援助をそのまま受けるのは危険です。
実際に家を建てる際などもそうなのですが、親からの資金援助は贈与税の対象となる可能性があるからです。
非課税の特例も用意されているものの、何も知らずに援助だけ受けてしまうと大変なことになるかもしれません。
今回の記事では親から資金援助を受ける際に知っておきたいことを解説します。
特に贈与税についてまったく知らないという方は、ぜひ最後まで読んで一通りの情報を身につけておくと安心です。
贈与税とは文字通り第三者から贈与を受けた際に課せられる税金のことです。
今回の記事では親からの援助という視点を基準していますが、財産を与えてくれた相手に関係なく財産を受け取った時点で贈与税が発生します。
これら贈与税は年間110万円の基礎控除が定められているため、110万円以内の贈与であれば課税対象とはなりません。
その場合、当然ながら申告の必要はなく、納税の義務も発生しません。
しかし、逆に110万円を超える財産の贈与を受けた場合は贈与税の課税対象となることを覚えておかなくてはなりません。
仮に住宅の購入資金として親から100万円の援助を受けた場合、贈与税はかかりません。
逆に、親から200万円の援助を受けた場合、贈与税がかかります。
これらは基礎控除110万円が軸となるため、それ以上であれば500万円でも1,000万円でも課税対象となります。
ただし、贈与税には非課税の特例があるので、必ずしも課税されるわけではありません。
贈与税に関しては非課税にできる特例があります。
これらは正式名称で「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」とよばれています。
この特例を活用すれば、本来かかるはずの贈与税を非課税にできる可能性があるわけです。
以下、詳しい内容について見ていきましょう。
贈与税の非課税の特例とは、一定の条件を満たすことで受けられる特例措置のことをいいます。
特に2015年1月1日~2021年12月31日の間に親などから資金援助を受けた場合、一定の要件を満たしていれば贈与税が非課税対象となるのです。
この特例をフル活用すれば最大3,000万円の贈与まで非課税となります。
この特例では基礎控除110万円を上乗せした金額、つまりは最大3,110万円まで贈与税がかからなくなるため、マイホームを取得する予定の方は活用すべき特例といえます。
しかし、これらの特例は消費税によっても左右され、10%に上がった際には非課税枠も変わってしまいます。
以下、参考までに消費税が10%の物件の非課税限度額です。
▼消費税8%
契約期間 | 一般住宅 | 省エネ等住宅以外 |
2015/1/1~2015/12/31 | 1,500万円 | 1,000万円 |
2016/1/1~2020/3/31 | 1,200万円 | 700万円 |
2020/4/1~2021/3/31 | 1,000万円 | 500万円 |
2021/4/1~2021/12/31 | 800万円 | 300万円 |
▼消費税10%
契約期間 | 一般住宅 | 省エネ等住宅以外 |
2019/4/1~2020/3/31 | 3,000万円 | 2,500万円 |
2020/4/1~2021/3/31 | 1,500万円 | 1,000万円 |
2021/4/1~2021/12/31 | 1,200万円 | 700万円 |
これらは消費税10%の場合の非課税枠となるため、消費税8%の物件と条件も変わります。
条件によっては数百万円~数千万円ほど非課税枠が変わることもあるため、その点は税理士などの専門家に相談して対応してもらうことをおすすめします。
なお、贈与税の非課税の特例を受けるには条件もあるため、以下で人に関する条件と住宅に関する条件をそれぞれまとめます。
これらの条件をクリアしていないと特例は受けられないため、必ず確認しておきましょう。
以下、特例を受ける際の人に関する条件です。
以下、特例を受ける際の住宅に関する条件です。
▼新築の場合
▼増改築の場合
では、家を取得する際に資金援助を受けた場合、どのように贈与税を割り出せば良いのでしょうか。
ここからは住宅購入時にかかる贈与税の計算方法を簡単にまとめます。
まずは、課税価格と課税税率と課税額を一覧表にしたものがあるので、そちらをご確認ください。
課税価格 | 贈与税率 | 控除額 |
~200万円以下 | 10% | – |
~400万円以下 | 15% | 10万円 |
~600万円以下 | 20% | 30万円 |
~1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
~1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
~3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
~4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超~ | 55% | 640万円 |
贈与税はそれぞれの財産によって課税対象が変わるものの、以上の一覧表に当てはめて計算すれば簡単に割り出せます。
なお、贈与税の計算式は以下となります。
・課税価格(贈与財産-110万円)×贈与税率-控除額=贈与税額
これらにそれぞれの財産を当てはめていくことで簡単に計算できます。
仮にここでは贈与財産が3,000万円だった場合、どのような計算方法となるのか以下に示しておきます。
・課税価格(3,000万円-110万円)×45%-265万円=1,035.5万円
つまり、3,000万円分の財産を贈与された場合は1,035.5万円の贈与税がかかるわけです。
もちろん、これらは家を購入する際の資金援助も含まれます。
そのため、基礎控除を超えるという場合にはきちんと申告しなくてはなりません。
なお、課税価格は贈与される財産によって左右されるため、前述の一覧表を確認しながらいくらになるのか試算しなくてはなりません。
これらの計算はそこまで難しくはありませんが、もし、わからないことがある場合は、税理士などの専門家に相談すると安心です。
贈与税の非課税の特例は一見すると非常にありがたいもののように思えますが、実は注意しておきたいこともあります。
ここからはこれら特例の注意点を簡単にまとめていくので、1つ1つ確認していきましょう。
家を購入する際、多くの方は住宅ローンを組むはずです。
これら住宅ローンにも実は特例が設けられています。
住宅ローン控除とは住宅ローン残高もしくは住宅取得対価のうち少ない方の1%が所得税から控除される特例のことで、条件次第で10年間控除が受けられる特例措置となります。
しかし、贈与税の特例と所得税の特例を併用する際は、適用額に注意が必要です。
仮に、4,000万円の家に対して借入額3,000万円で贈与額1,500万円だった場合、本来の4,000万円から贈与額1,500万円を差し引くと2500万円となってしまいます。
そうなると借入額の3,000万円中2,500万円が住宅取得等資金となるわけです。
当然、超過した500万円分は住宅ローン控除の対象外となります。
その結果、むしろ負担が増える場合もあるのです。
だからこそ、住宅ローンと併用する場合は適用額に気をつけなくてはなりません。
本来、税金というのは0円であれば申告は不要とされています。
たとえば、個人事業主として何か事業をしていても事業所得が0円だった場合、確定申告は不要です。
贈与に関しても0円であれば確定申告は原則として不要です。
しかし、贈与税の特例を受ける場合は必ず確定申告が必要となります。
そもそも申告がない限り、税務署も特例を適用することはできません。
そのため、贈与税の特例を受けたい場合は2月1日~3月15日までに申告を済ませておきましょう。
なお、申告期限を過ぎてしまうと、最悪の場合は贈与税の特例が受けられない場合もあります。
これらは原則として贈与を受けた翌年に申告することになるため、少しややこしいです。
たとえば、2020年分の適用を受けるなら2021年の2月1日~3月15日までに申告を済ませなくてはならないわけです。
ちなみに、確定申告には以下の書類が必要となります。
こちらも併せて用意しましょう。
これら必要書類をまとめて申告しなくてはなりません。
なお、本人確認書類は免許証や保険証だけでなく、マイナンバーカードや通知書でも問題ありません。
ただし、もしわからないことがあれば管轄の税務署に問い合わせてみてください。
税金というのは誰しも「払いたくない」という気持ちがあるはずです。
直接、手渡しすればバレないと思って資金援助について黙っている方もいます。
たしかに、税務署を通さなければ、課税対象となることもありません。
しかし、当然ながら支払い義務のある税金を逃れようと故意に不正を働けば、脱税という扱いとなります。
資金援助そのものを隠すのはもちろん、援助の金額を過少に申告するのもアウトです。
それら申告事態を避けたり、虚偽の申告をしたりすると法で罰せられる可能性があります。
特に、税務署は毎年税務調査を行っているため、黙っていても発覚します。
そのため、リスクを冒してまで脱税するより、正しい方法で納税することをおすすめします。
贈与税の場合は基礎控除もありますし、特例措置もあります。
これらを活用すればそこまで贈与税が負担となることも多くはないため、資金援助した場合は必ず申告しましょう。
贈与税でたまにあるのですが、タイミングによって特例が適用されないことがあります。
特に贈与を受けた翌年3月15日までに物件が完成していない場合、特例の対象外となってしまいます。
また、贈与を受けた翌年12月31日までに居住していない場合、こちらも特例の対象外となるのです。そのため、贈与のタイミングには十分に気をつけてください。
そのほか、住宅ローン決済後に贈与を受けた場合、返済に充てた分が特例の対象外となります。
ここは意外な落とし穴となってしまうため、住宅ローンを組む方も注意が必要です。
くれぐれも贈与のタイミングを間違わないよう、特例をフル活用できるタイミングで実行してください。
贈与税の非課税の特例はフル活用できれば心強い制度といえます。
しかし、実は使用しない方が節税できるケースもあります。
特に、小規模宅地等の特例を受ける場合は、むしろ贈与税の特例を受けないほうが節税になるわけです。
小規模宅地等の特例は物件の評価額を330m2まで80%軽減できる特例なのですが、贈与税の特例を適用すると逆効果となってしまいます。
特に、物件の評価額を減らせなくなるため、必ずしも贈与税の非課税の特例を受ければ良いということではありません。
また、被相続人の物件を相続する際にも注意が必要です。
この場合、小規模宅地等の特例が適用できるのは配偶者や家族や親戚のみとなります。
配偶者に関しては条件も緩和されているものの、ほかの家族や親戚が家を取得すると小規模宅地等の特例を受けられなくなります。
そのため、どの特例を選択するか慎重に検討しなくてはなりません。
資金援助を考えている方は、非課税限度額以上に贈与を受けたいと考えている方も多いかもしれません。
原則として、特例を受ける場合は限度額に注意が必要なのですが、方法によっては非課税の限度額以上に贈与を受けることも可能です。
以下、特例の限度額以上に贈与を受けたい場合に実践したい方法をまとめます。
最も正統な方法としては、超えた分の贈与税を納めるというのが安全です。
贈与税は特例によって非課税となる分もあるのですが、それ以上に資金援助を受けたいということなら、きちんと超過分の贈与税を納税しましょう。
正当に納税すれば誰も文句は言いませんし、いくら贈与を受けても問題ありません。
贈与税の基礎控除は年間で110万円までと定められています。
つまり、1年で110万円ずつまでなら非課税となるわけです。
そのため、資金援助を小分けにするという方法もあります。
1年で1,100円の資金援助をするのと10年かけて毎年110万円ずつ資金援助するのとでは違うということです。
これは極端な例ですが、要は小分けにして資金援助すれば、課税を回避しつつ贈与を受けられます。
相続時精算課税を選択する方法もおすすめです。
これは2,500万円までの贈与に対して、贈与税を非課税とする代わりに相続税を課税するという制度となります。
実は、相続税の方が贈与税に比べて基礎控除も大きいため、節税効果も大きくなります。
うまく活用すれば、より多くの贈与を受けられることになるため、贈与税の非課税の特例をオーバーしそうな場合は相続時精算課税の活用も考えてみましょう。
日本では古くから一家の大黒柱がオーナーとなり、夢のマイホームを持つというのが通例でした。
しかし、現代は共働きも増えたことによって、必ずしもその限りではなくなっています。
共同名義にすることで1つの物件を複数名で所有・登記できます。
これによって贈与税の基礎控除をより有効活用できるため、相続時精算課税を利用するよりもお得になることが多いです。
資金援助の際、実は贈与以外で援助を受ける方法があります。
それが「もらう」のではなく「借りる」という方法です。
実は、血縁関係にある親子であっても、融資という概念が適用されます。
つまり、親に資金をもらうのではなく借りることで、より援助を受けられるわけです。
これなら贈与税を回避しつつ、親に返済するというかたちで資金援助してもらえます。
もちろん、これらはあくまでも借りている状態となるため、返済義務が発生します。
どうしても親子間だと曖昧になることも多いため、きちんと契約書などで取り決めて契約するようにしましょう。
マイホームを手に入れる際、親から資金援助を受ける方も多いです。
しかし、資金援助を受ける場合は贈与税の課税対象となる場合もあります。
原則として贈与税には基礎控除が110万円用意されていますが、まとまった資金援助を受ける場合は簡単に110万円など超えてしまいます。
その一方で、非課税の特例なども用意されているため、上手に活用して節税していくことが求められるでしょう。
ただし、これらは税金に対する知識が必要となるため、税理士など専門家にも相談することをおすすめします。
土地探しに不安がある、住宅資金に不安がある、家づくりをしたいが何から始めれば良いか分からないなど住宅についてのお悩みがある方は、以下より来場にてお気軽にご相談ください。